理事長のご挨拶

  • 『理事長より新年のご挨拶』


皆様、新年あけましておめでとうございます。
皆様におかれてはご家族とご一緒に穏やかな年の初めを迎えられたものとおよろこび申し上げます。

 昨年を振り返りますとコロナウイルスの社会に与える悪影響は相当程度下火になりました。一方でロシアによるウクライナ侵攻は止まるところを知らず長期化しています。東西の思惑の中でウクライナ国民の被害だけが拡散しているようにも見えます。しかし戦場における直接的な被害だけでなく紛争の影は世界の政治・経済にも様々な悪影響を与えています。また、イスラエルのガザ地区におけるハマスとイスラエルの紛争も一般市民を巻き込んだ血みどろの戦いの様相のまま未だに解決の糸口も見えない状況です。

 このような暗い出来事が起こっている中でわれわれを元気付けてくれる話題もいくつもありました。その中でも一番はなんといっても大谷翔平君の大活躍でしょう。44本塁打で日本人初めての本塁打王、この間に盗塁15をマークするなど攻撃面でも目覚ましい活躍を成し遂げる一方で投手としても被打率はリーグトップ、20回2/3連続無失点など、投手としても一流の選手であることも証明して見せてくれました。野球では選手を評価する時に「攻、走、守」三拍子揃った名選手などと言いましたが、彼は「攻、走、守」に「投」を加えて4拍子揃った天才プレーヤーということだと思いました。

 この大谷選手の素晴らしいエピソードはこれまた数え上げればキリがありませんが、私はワールドベースボールボールクラシックの時に見せた彼のチームをまとめ上げる力、チームの結束を強めた動きに注目していました。彼がとてつもないスーパースターであることはみんなわかっていたと思いますが、チームの力は個々の力がしっかりと結びつきあいお互いに補い合うことで単なるたし算以上の力を出すことができるものです。それが「結束」。このことを若いチームの中でベテラン、ダルビッシュ選手と共に皆に伝え見事優勝に導いたことは彼の人間力の賜物だと思っています。

 この「結束力」ですが、このことは私たち自動車シート縫製業界においても今強く求められていると言えます。

 政府においては外国人技能実習生制度を廃止し、新たな在留資格を創設するとともに特定技能制度との組み合わせの中で日本における外国人労働力を確保していくための制度改正に取り組んでいることはご承知のとおりです。このための新しい法律は今年の通常国会に提出されることになっています。少なくとも数年内には外国人技能実習生は技能実習生という資格では日本に入って来れなくなります。では、新しい制度のもとで外国人が日本に入国し自動車シート縫製作業に従事できるかというと、我々にとってのこの最大の関心事項については現在のところ明確になってはいません。

 政府としては外国人に働いてもらいたいと言う希望のある業種の必要度、そしてその業種が外国人の人権を守り適正な労働環境を提供することができるかなど様々な外国人労働者を取り巻く環境とそれに対するそれぞれの業界の姿勢、ニーズを見極める中で新しい制度下で外国人を使うことのできる業種を定めていくものと思われます。

 今年はこのようなとても微妙な時期です。こんな時だからこそ関係する企業の皆さんが「結束」し、一体となって政府に対しても業界の意見、希望をはっきりと進言していける体制を取ること、そして、それぞれの企業がルールを守り外国人の人権にも十分留意した労働環境を提供できる体制に努めることが求められています。

 それぞれの企業の皆さんにとってはこれまでと違う対応を求められることに戸惑いや不安を感じられることもあろうかと思います。とは言え、避けて通ることのできない制度の大変革が行なわれようとしています。こんな時こそ、ピンチをチャンスに。何年か経って振り返った時にあの2024年の外国人労働者制度の大改正の時に自動車シート縫製業界は「結束」することでピンチを乗り越えさらに業界の生産性を大幅にあげる変革を成し遂げたといえるような年になればという初夢を見ております。

皆様、どうぞ今年もよろしくお願いいたします。

   令和6年 元旦

          一般社団法人日本ソーイング技術研究協会 理事長
                                 御園 愼一郎