理事長のご挨拶

  • 『理事長より新年のご挨拶』


お屠蘇が吹き飛んでしまうマグニチュード7.6、震度7という巨大な能登半島地震で昨年は年が明けました。追い打ちをかけるように9月に能登地方は記録的大雨に襲われました。ここに改めてお亡くなりになった方のご冥福をお祈りし被災された方にお見舞い申し上げるとともに速やかな復興を願います。

 このご挨拶をお読みいただく2025年のお正月は穏やかで人々の笑顔が溢れていてほしいと祈りつつご挨拶お申し上げていますが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか?

 昨年の我が国も世界の情勢もまさに激動の時代を予感させる様々なチャレンジ、挑戦がスタートしました。政治の世界に目を向けると9月には岸田総理が退き石破茂氏が第102代内閣総理大臣に就任しました。その余勢をかって行った衆議院の解散総選挙では自民・公明の与党は過半数割れを起こしてしまいました。今後海図のない国会審議、国政運営の中でチャレンジングな対応をせざるを得なくなると思われます。アメリカではバイデン大統領の引退後の選挙でトランプ氏が大統領に返り咲きました。アメリカファーストを貫くトランプ大統領の元でアメリカ国内の分断は進むのか、対中国への強硬姿勢が予想される中で米中間はどうなっていくのか。目をアメリカから世界に向けると世界の各地で平和が崩壊しています。依然としてやまないロシアとウクライナでの戦争、イスラエルとパレスチナの人々の紛争、そしてついに崩壊してしまったシリアのアサド政権。そのどれをとっても海図のない航海を続けていく状態が続いています。このような時に求められるのは冷静な目で状況を見極めた上での和平にむけたあくなきチャレンジ精神だと思います。争いの時代を終わらせ平和を構築して人々に穏やかな生活を提供することを頑なに求め続けるチャレンジ精神がまさに求められていると言っていいでしょう。

 スポーツの世界を振り返っても多くの栄光とそれに続くチャレンジがスタートしています。まずはなんといっても50-50、ホームラン54本、59盗塁という前人未到の大記録を打ち立てさらに移籍一年目でドジャースを世界チャンピオンに引き上げた大谷翔平くん。彼はすでに今年のワールドシリーズ連覇を目指したチャレンジに取り組んでいます。また、パリオリンピックでも若い力が躍動しました。金メダル20個、銀メダル12個、銅メダル13個合計45個のメダルは海外の夏季五輪では最多でした。そして彼らは2028年のオリンピックに向けてチャレンジをスタートさせています。

 このチャレンジというキーワードは私たち自動車シート縫製業界にとってもとても重要なワードなのです。大きく制度が変わり新しい仕組みが適用されそれに対応できない企業は淘汰されていかざるを得ない状況になってきています。そんな時ですからまず我々に求められていることに関しての正しい知識を知った上で適切に対処していくことが必要です。

 昨年6月にいわゆる育成就労法が成立して外国人技能実習生制度が廃止されることになりました。この法改正によって新たに創設された育成就労制度のもとでも外国人を自動車シート縫製作業に従事させることができることとなっています。これは当然のことと思っている方がおられるかもしれませんが、それは誤りです。この措置をあまり苦労することなく手に入れられたのは、私たち日本ソーイング技術研究協会が自動車シート縫製産業を繊維産業の一部であるとして経済産業省に認めてもらい繊維産業連盟に加盟していたから(先見の明があったから)なのです。このことは特筆しておきたいと思います。これがあったが故に外国人技能実習生として外国人を受け入れできなくなっても育成就労という在留資格で外国人に来日してもらい3年間は働いてもらうことができることとなっています。ここまではこれまで通りです。

 さて、ここから我々自動車シート縫製産業にもチャレンジが求められる事態が生じてきます。
というのは育成就労の3年間が経過したのちさらに日本で自動車シート縫製作業に従事するための資格として特定技能という在留資格が設けられています。この在留資格を有することとなった外国人を使用するためには雇用する企業に4つの条件が課されていてこれをクリアーしないと雇用できないことになっているのです。その条件は①サプライチェーン構築宣言②賃金の月給制化③勤怠管理の電子化④人権保護がなされていることの認定、です。


 この4条件、特に四つ目の人権に関することは国際的にも批判されていて政府も大変ナーバスになっている事項ですのでよほどきっちり対応しないと企業経営に影響が出かねないと感じています。

 この新しい制度についてはその全容がまだ見えてきていないという状況ですが我々業界にとってもそれぞれの企業に対してかなりの負担を強いることになるだろうと予測しています。コロナが済んだと思ったらまた大きな波が来るということだと思ってください。そうは言っても逃げるわけにもいきません。ここはみんなで力を合わせて大波に向かってチャレンジしてしっかり乗り越えていってもらいたいと思っています。

 我々日本ソーイング技術研究協会も皆さんがこの大波をできるだけ負担軽く乗り越えて行ってもらえるように知恵を出しチャレンジをしています。どうぞ期待していてください。皆さんと気持ちを一つにしてこれからの課題に対処し、そしてこの自動車シート縫製業界をもっともっと誇り高い産業にしていく、そんなチャレンジのスタートの年だったねと何年か後に語り合える年になればいいなとお伝えして新年の挨拶にかえさせていただきます。

 今年もどうぞよろしくお願いいたします。

  令和7年   元旦

          一般社団法人日本ソーイング技術研究協会 理事長
                              御園 愼一郎